第2回「味噌ものがたり大賞」受賞者発表!!
優秀賞まとう 様
京都発、博多行きの新幹線。その時私はひどく落ち込んでいた。就職活動をはじめるも、届くのは所謂「お祈りメール」ばかり。はじめて社会という見えない存在に「キミなんか、いらないよ」とそっぽを向かれた気持ちになった。そんな時、私の電話の声を聞き実家の母が「少し気晴らしに帰っておいで」と言ってくれたのだった。久しぶりの我が家で母が決まって用意してくれたのが「ぐずぐず豚汁」だった。白菜・人参・大根・牛蒡に椎茸。こんにゃく豚バラ油揚げ。そして欠かせないのが里芋。我が家の豚汁はこの里芋がぐずっとなるまでよぉく煮る。すると、里芋のおかげで少しどろっととろみのある、野菜と豚の甘みも溶け出したなんとも腹にたまる特別な味噌汁になるのだ。この豚汁こそが私の好物。母は特に何も言わず、我が家の豚汁をよそってくれた。一口啜ると、からだの内からあったまる。あまかった。優しかった。「大丈夫よ」と言われているような気がした。
審査員長 松浦弥太郎の評
料理とは、ときに言葉以上の力を持ちます。その一杯を食べられる場所が、自分にとっての帰る場所なのだと、まとう様の文章からあらためて気づかされました。里芋がとろりと崩れ、野菜の甘みも豚肉の旨みもやさしく溶け込んだ「ぐずぐず豚汁」。ほんとうにおいしそうです。