第2回「味噌ものがたり大賞」受賞者発表!!
優秀賞平山 様
「煮干し」
子供の頃、田舎の実家で、毎朝母親が作ってくれた味噌汁には、必ず煮干しが入っていた。あの独特の苦みが苦手で、他の具は全て食べ、煮干しだけを食べ残すと、いつも母親に叱られたことを思い出す。
高校卒業後、東京での一人暮らしと共に、外食の機会も増えた。近所の食堂で和定食を注文すると、メインのおかずとご飯に味噌汁がついてくる。だが、その味噌汁には煮干しが入っていない。鰹節で出汁をとっている店が多く、煮干しを使っている店は少なかった。お陰で提供された味噌汁は全て飲み干せた。
ただ不思議と何か物足りない。子供の頃、あれだけ嫌いだった煮干しであるが、入っていないとなぜか寂しい気持ちになった。
今もたまには帰省しているが、母親の味噌汁の作り方は変わっていない。母親も九十歳を過ぎ、いつまでこの味噌汁を味わうことができるかわからないが、この作り方は引き継いでいこうと心に決めている。
審査員長 松浦弥太郎の評
煮干しの入っていない味噌汁と出会ったときの物足りなさ。味としての不満ではなく、「母の味がそばにない」ことへの言葉にならない寂しさなのでしょう。大人になるということは、かつて苦手だったものの中に、懐かしさや愛おしさを見つけることかもしれません。お味噌汁は母から子への尊い贈りものでもあると読ませていただきました。